
ユニハイビジョンVTR:放送局標準記録方式
昭和六十年代後半、放送の世界は大きな変化の時期を迎えていました。アナログ方式からハイビジョン方式への移行という、まさに技術革新の時代でした。画面のきめ細やかさ、鮮やかさが増す高画質放送への期待は高まる一方で、大きな問題も抱えていました。それは、各社が独自にハイビジョン録画機を開発していたために、異なる会社の機器同士では録画したテープを再生できないという互換性の問題です。例えば、ある会社で録画したハイビジョン番組を、別の会社の録画機で再生することができません。これは、番組制作の現場で大きな支障となりました。異なる会社の機器を揃えるには多額の費用がかかり、作業効率も悪くなってしまうからです。また、番組の交換や保管にも不便が生じ、放送業界全体の発展を阻害する要因にもなりかねませんでした。この問題を解決するため、放送業界全体で協力して統一規格のハイビジョン録画機を開発するという機運が高まりました。そこで中心となったのが、日本放送協会の技術部門を担うエヌエイチケイエンジニアリングサービスです。同社を主体として、国内の電機メーカー十社が共同開発に乗り出しました。それぞれの会社が持つ技術や知恵を結集し、統一仕様のハイビジョン録画機を作り上げるという、当時としては非常に画期的な取り組みでした。これが後に「ユニハイビジョン録画機」、愛称「ユニハイビジョンブイティーアール」と呼ばれることになる規格の始まりです。この共同開発は、日本の放送業界の未来を大きく変える、重要な一歩となりました。