
高音質を実現するメタルテープの魅力
金属テープとは、かつて録音機で使われていた磁気テープの一種で、高音質録音を実現する媒体として人気がありました。家庭用の小型録音機から業務用の大型録音機まで、幅広く使われました。特に、音楽愛好家の間では、その優れた音質から高い評価を得ていました。従来の磁気テープは、酸化鉄という、鉄と酸素が結びついた物質の粉末を塗ったものでした。この粉末に録音機の磁気ヘッドが磁力を与えることで、音の情報が記録されます。しかし、この酸化鉄を使ったテープには、高音域の音がうまく記録できない、雑音が混じるといった欠点がありました。そこで登場したのが金属テープです。金属テープは、酸化鉄の代わりに、純粋な鉄の微粒子をテープに塗ったり、蒸着したりすることで作られました。この鉄の微粒子は、酸化鉄に比べて、磁力を強く受ける性質がありました。そのため、より多くの音の情報を記録することが可能となり、高音域の伸びや繊細な音の表現力が飛躍的に向上しました。金属テープは、従来のテープよりも高価でしたが、その優れた音質は多くの音楽愛好家を魅了しました。特に、高音域の伸びとクリアな音質は、他のテープでは再現が難しく、金属テープならではの特長でした。また、雑音や音の歪みも少なく、原音に忠実な録音が可能でした。そのため、演奏会の実況録音や、大切な音楽を保存するために、金属テープが使われることが多かったのです。現在では、録音技術の進歩により、磁気テープを使う機会は少なくなりましたが、かつて一世を風靡した金属テープは、高音質録音の象徴として、今もなお語り継がれています。