
動画編集の縁の下の力持ち:フライングイレースヘッド
昔の家庭用録画機器でよく使われていた、らせん状に記録する方式(ヘリカルスキャン方式)のビデオテープレコーダーには、録画時間が長いという利点がありました。しかし、この方式には、録画した場面をつなぎ合わせる編集作業を行う際に、映像に余計なざらざらとした模様(ノイズ)が生じやすいという問題がありました。このノイズは、前の録画の残像が原因です。ビデオテープレコーダーには、テープ全体の記録を消すための消去ヘッドが備えられています。このヘッドは、映像を記録する回転ヘッドよりも前に配置されています。編集点では、この配置の違いによって、わずかに前の記録が消しきれずに残ってしまうのです。この消し残りがノイズの原因となり、編集後の映像の質を悪くしてしまうのです。例えば、番組を録画していて、途中で不要な広告の部分をカットして繋ぎ合わせるとします。この時、カットした部分の直前には、前の記録の残像がノイズとなって現れ、映像が乱れてしまいます。この問題を解決するために、新たな技術が開発されました。それが「飛び越し消去ヘッド」(フライングイレースヘッド)という技術です。回転ヘッドの直前に消去ヘッドを配置することで、前の記録をより確実に消去することが可能になりました。これにより、編集点でのノイズを大幅に減らし、滑らかで綺麗な映像を実現することができました。この技術によって、ビデオテープレコーダーの編集作業は格段に容易になり、質の高い映像作品を制作することができるようになりました。まるで映画のように、場面が自然に繋がる編集が可能になったのです。