
自然な音を取り戻す:ディエンファシスとは
音や映像を扱う際に、「強調」と「元に戻す」という一対の作業が必要になることがあります。音を録音する時、あるいは映像を録画する時に、雑音を取り除いたり、ある音域を聞き取りやすくするために、特定の音域を強調する処理を行うことがあります。これを「エンファシス」と言います。しかし、強調された音をそのまま再生すると、不自然な音質に聞こえてしまいます。そこで、「ディエンファシス」という処理が必要になります。ディエンファシスとは、エンファシスで強調された音域を元に戻す処理のことです。これによって、強調された音域とそうでない音域のバランスが整えられ、自然で聞きやすい音質が再現されるのです。エンファシスとディエンファシスは、まるで料理の味付けに似ています。料理を作る際に、塩や砂糖などの調味料を加えて味を調えますが、味が濃すぎるとおいしくありません。そこで、水を加えたり、他の調味料で調整して、ちょうど良い味に仕上げます。エンファシスは調味料を加える工程、ディエンファシスは味の最終調整を行う工程と言えるでしょう。ディエンファシスは、高音質を実現するために欠かせない技術です。この技術のおかげで、私たちは歪みのない、本来の音を楽しむことができるのです。例えば、レコードやカセットテープ、テレビ放送など、様々な場面でこの技術が活用されています。録音や録画の段階で加えられた強調を元に戻すことで、私たちは本来の音源が持っている繊細な響きや、奥行きのある音場を体験できるのです。まるで、曇っていた窓ガラスを拭いて、外の景色がクリアに見えるようになったように、ディエンファシスは音の濁りを拭き取り、本来の輝きを取り戻してくれるのです。