1インチ

記事数:(3)

規格

動画制作とインチ規格の関係

動画を作る仕事では、「インチ」という単位をよく目にします。特に、昔のビデオテープの大きさや、カメラの心臓部であるセンサーの大きさなどで使われています。なぜ、世界基準になりつつあるメートル法ではなく、「インチ」が使われているのでしょうか?それは、ビデオテープ録画装置が初めて作られた時代に理由があります。昔の技術では、テープの幅を「インチ」で決めるのが普通でした。そのため、ビデオテープの規格も「インチ」で決められ、それが今でも続いています。ビデオテープの幅が「2インチ」のオープンリール方式のものが開発されたのが1951年。その後、民生用の「1/2インチ」のものが開発され、時代を席巻していくことになります。今では、テープを使わない撮影が主流ですが、センサーの大きさなど、一部ではまだ「インチ」が使われています。これは、昔の技術との繋がりを残すため、あるいは業界の習慣として根付いているためだと考えられます。たとえば、業務用の大きなカメラで採用されていた2/3インチというセンサーサイズが基準となり、その後小型化が進む中で1インチ、1/2インチ、1/3インチといったセンサーサイズが開発されていきました。このように「インチ」を使った規格には、歴史的な背景があり、動画制作を理解するには欠かせない要素となっています。「インチ」という単位は、アメリカなど一部の国で使われている長さの単位で、1インチは約2.54センチメートルです。メートル法に統一されつつある現在でも、テレビの画面の大きさやパソコンのディスプレイの大きさなど、身近なところで「インチ」が使われています。動画制作の世界では、特に「1/2インチ」「1/3インチ」「2/3インチ」といった単位をよく見かけます。これらの数字が小さいほど、センサーの面積が小さくなります。センサーの面積が大きいほど多くの光を取り込むことができ、画質が向上する傾向があります。また、背景をぼかした表現もしやすくなります。逆にセンサーの面積が小さいと、暗い場所での撮影に弱く、画質が低下する傾向があります。動画制作に携わる人は、これらのセンサーサイズの特徴を理解し、撮影目的に合った機材を選ぶことが大切です。
規格

オープンリール:映像と音のアナログ記録

開かれた巻き枠、これがまさにオープンリールです。名前の通り、磁気テープが巻かれたリールがむき出しの状態になっている録音再生機器、またはその機器で使うテープそのものを指します。箱に入った音楽用テープや録画用テープとは違い、リールに巻かれたテープがそのまま露出しているため、丁寧に扱う必要があります。少しの埃や指の油でも記録された音や映像に影響が出てしまうほど繊細なのです。しかし、その繊細さゆえに、高音質で記録、再生できるという大きな利点があります。かつては、放送局や録音スタジオといった、音のプロたちが働く場所で広く使われていました。録音といえばオープンリールという時代もあったほど、アナログ録音の代表でした。近頃は、コンピュータを使ったデジタル技術が発展し、主役の座からは退いてしまいました。しかし、今でも独特の音の深みや温かみを好む音楽好きや、音のプロたちはオープンリールを使い続けています。機械的な動作音や、テープのあたたかみのある質感など、デジタルでは再現できない独特の魅力が、今もなお人々を惹きつけているのです。それはまるで、古い蓄音機から流れる音楽に懐かしさを感じるのと似ているのかもしれません。時代遅れと言われるかもしれませんが、時代を超えて愛される理由がそこにはあるのです。
撮影機器

1インチヘリカルVTR:放送局を支えた技術

一インチヘリカル録画機について解説します。これは、幅一インチの磁気テープに映像を記録する装置です。名前の由来にもなっている「ヘリカル走査」という方法で記録を行います。ヘリカル走査とは、回転する円筒に、斜めに記録用の磁気ヘッドを取り付け、磁気テープを螺旋状に走査しながら記録する方式です。この螺旋状の走査の様子が、巻き貝の殻に似ていることから、ヘリカル(螺旋)走査と呼ばれています。この方式の利点は、比較的小さな装置で長時間の録画が可能になることです。一インチヘリカル録画機は、主に放送局で使用され、ニュース番組、ドラマ、ドキュメンタリー番組など、様々な番組制作に活用されてきました。特に、当時の他の録画方式と比べて高画質であったこと、そして編集作業が比較的容易であったことが、放送業界における標準規格として広く普及した大きな要因です。高画質を実現できた背景には、広いテープ幅とヘリカル走査による記録密度の高さがあります。加えて、編集の容易さも大きなメリットでした。テープを物理的に切断して繋ぎ合わせる編集方式と比べ、電子的に編集点を選択し、映像を繋ぎ合わせる作業が可能になったため、編集作業の効率が飛躍的に向上しました。一インチヘリカル録画機が登場する以前は、大型で扱いにくい録画装置が主流でした。そのため、小型で高画質、さらに編集も容易な一インチヘリカル録画機は、放送業界に革命をもたらしたと言えるでしょう。その後のデジタル化時代にも、一インチヘリカル録画機で記録された数多くの貴重な映像資料が、デジタル化され保存されています。