量子化ビット数

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規格

高音質録音フォーマット:DTRS

かつて、音や映像を記録する機械で、質の高い音を取り込む方法として、磁気テープに記録する装置が広く使われていました。その中でも、ティアックが作ったタスカムという名前の録音機は、特別なテープを使って音を記録する、DTRSという方式で、専門家の人たちから高い評価を受けていました。このDTRSという方式は、当時よく使われていたハイエイトと呼ばれるビデオテープと同じ大きさのテープを使っていました。そのため、装置の大きさを小さくしながらも、質の高い音や、複数の音を同時に録音することができたので、様々な場所でとても役に立っていました。このDTRSという方式は、アナログ方式とデジタル方式のいいところを組み合わせたハイブリッド方式を採用していました。音の信号をデジタルデータに変換することで、アナログ方式にありがちなノイズや音質の劣化を防ぎ、クリアな音を実現していました。また、ハイエイトテープを使うことで、小さなテープにたくさんのデータを記録することができました。これは、当時の技術としては画期的なことでした。さらに、DTRS方式は、複数の音を同時に録音することができました。8つの音を同時に録音できる8トラックの機種は、音楽制作の現場で特に人気がありました。複数の楽器の音を別々に録音することで、後からそれぞれの音量や音質を調整することができるため、より完成度の高い作品を作ることが可能になりました。DTRSは、持ち運びしやすい大きさでありながら、プロの現場で求められる高い音質を実現していたため、録音機材としては革新的な存在でした。ラジオ番組の制作や、野外での録音、映画やドラマの音声収録など、様々な場面で使われました。コンパクトで高性能なDTRSは、多くの技術者や制作者にとって心強い味方でした。現代では、さらに技術が進歩し、より高性能な録音機が登場していますが、DTRSは、デジタル録音技術の発展に大きく貢献した、重要な技術として記憶されています。
音声

1ビット録音方式:高音質への挑戦

音を記録する技術に、画期的な方法が登場しました。それは「1ビット録音方式」と呼ばれるもので、これまでの録音方法とは全く異なる仕組みを持っています。これまでの録音では、音を数字のデータに変換する際に、音の波形を細かく分けて、それぞれの高さや強さを複数の数字で記録していました。この数字の細かさを「量子化ビット数」と呼びます。多くの場合、この数字が多ければ多いほど、より原音に近い豊かな音声を記録できると考えられていました。しかし、1ビット録音方式では、この量子化ビット数を「1」という最小単位にまで絞り込んでいます。その代わりに、音の波形を読み取る頻度、つまり「サンプリング周波数」を非常に高く設定することで、音の情報を詳細に記録しています。これは、まるで点描画のように、非常に細かい点を無数に集めて絵を描くことに似ています。一つ一つは単純な点ですが、それらが集まることで、驚くほど緻密で繊細な表現が可能になります。1ビット録音方式も同様に、音の波形を非常に細かい単位で記録することで、従来の方法では捉えきれなかった繊細な音のニュアンスまで再現できるようになりました。従来の複数ビットを用いる方式では、どうしても記録できる音の範囲に限界がありましたが、1ビット録音方式では、この限界を大きく超えることができます。まるでコンサートホールで直接音を聞いているかのような、臨場感あふれる音声を記録することが可能となり、音楽制作の可能性を大きく広げているのです。これまで聴こえなかった音が聴こえるようになることで、音楽の楽しみ方も大きく変わっていくでしょう。