
磁気記録の要、最大残留磁束密度とは?
磁気記録とは、磁石の性質を持つ物質、つまり磁性体を利用して情報を記録する技術のことです。磁性体は、小さな磁石がたくさん集まっているとイメージすると分かりやすいでしょう。それぞれの小さな磁石は、通常バラバラな方向を向いていますが、外部から磁力を加えると、その磁力の方向に整列します。この性質を利用して、情報を記録するのが磁気記録の原理です。具体的には、磁気ヘッドと呼ばれる装置を使って磁性体に情報を書き込みます。磁気ヘッドは、電流を流すと磁界が発生する電磁石のようなものです。この磁気ヘッドを磁性体の近くで動かしながら電流の強さを変化させることで、磁性体の小さな領域を異なる方向に磁化させます。磁化の方向の違いが、0と1のデジタルデータに対応し、情報を記録できるのです。例えば、カセットテープでは、テープ状の磁性体が用いられています。録音ヘッドが音声信号に応じて磁界を変化させ、テープ上の磁性体の磁化パターンとして音声が記録されます。再生時には、再生ヘッドがテープの磁化パターンを読み取り、電気信号に変換することで音声が再生されます。ハードディスクドライブ(HDD)では、円盤状の磁性体が高速回転しています。この円盤上に、磁気ヘッドが磁界を印加することでデータの書き込みを行います。HDDの場合、カセットテープよりもずっと小さな領域に磁化パターンを記録できるため、大容量のデータを保存できます。クレジットカードの磁気ストライプも磁気記録の一種です。ストライプには、氏名やカード番号などの情報が磁気パターンとして記録されています。読み取り機に通すと、磁気ヘッドが磁気パターンを読み取り、情報を取り出します。このように、磁気記録は様々な機器で利用されています。磁気記録の性能を決める重要な要素の一つに「最大残留磁束密度」があります。これは、磁性体が磁化された後に残る磁力の強さを示す値です。この値が大きいほど、より小さな領域に情報を記録でき、高密度化が可能になります。そのため、より多くの情報を記録できる高性能な磁気記録媒体の開発には、最大残留磁束密度の高い磁性体の開発が重要です。