物理学

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保磁力:磁気の記憶力を知る

磁石は、外部から磁力を加えられると、自らも磁力を帯びる性質があります。そして、外部からの磁力をなくしても、磁石はしばらくの間磁力を持ち続けます。この現象は、磁石がまるで以前の磁力を「記憶」しているように見えるため、「残留磁気」と呼ばれています。では、この記憶を消すにはどうすれば良いのでしょうか?実は、磁石に逆向きの磁力を加えることで、残留磁気をなくすことができるのです。この時、どれだけの強さの逆向きの磁力を加えれば残留磁気をゼロにできるのか?それを表す尺度こそが「保磁力」です。保磁力は、磁石の記憶力の強さを示す値と言えるでしょう。保磁力の値が大きいほど、磁石は磁力を失いにくく、強い逆向きの磁場にも耐えることができます。逆に保磁力の値が小さいと、少しの逆向きの磁場でも磁力を失ってしまいます。ですから、保磁力は磁石の性能を表す重要な指標の一つとなっています。保磁力の単位は、エルステッド(Oe)という単位で表されます。エルステッドという名前は、電磁気の研究に大きな貢献をしたデンマークの物理学者、ハンス・エルステッドに由来しています。保磁力の大きさは、磁石の種類によって大きく異なります。例えば、冷蔵庫などにメモを貼る際に使うような、比較的弱い磁石は保磁力が小さく、すぐに磁力を失ってしまいます。一方、モーターや発電機などに使われる強力な磁石は、高い保磁力を持っており、長期間にわたって安定した磁力を維持することができます。このように、保磁力は磁石の性質を理解する上で重要な概念であり、様々な用途に応じて適切な保磁力を持つ磁石が使い分けられています。磁石を選ぶ際には、用途に合わせて保磁力にも注目することが大切です。