
1ビット録音方式:高音質への挑戦
音を記録する技術に、画期的な方法が登場しました。それは「1ビット録音方式」と呼ばれるもので、これまでの録音方法とは全く異なる仕組みを持っています。これまでの録音では、音を数字のデータに変換する際に、音の波形を細かく分けて、それぞれの高さや強さを複数の数字で記録していました。この数字の細かさを「量子化ビット数」と呼びます。多くの場合、この数字が多ければ多いほど、より原音に近い豊かな音声を記録できると考えられていました。しかし、1ビット録音方式では、この量子化ビット数を「1」という最小単位にまで絞り込んでいます。その代わりに、音の波形を読み取る頻度、つまり「サンプリング周波数」を非常に高く設定することで、音の情報を詳細に記録しています。これは、まるで点描画のように、非常に細かい点を無数に集めて絵を描くことに似ています。一つ一つは単純な点ですが、それらが集まることで、驚くほど緻密で繊細な表現が可能になります。1ビット録音方式も同様に、音の波形を非常に細かい単位で記録することで、従来の方法では捉えきれなかった繊細な音のニュアンスまで再現できるようになりました。従来の複数ビットを用いる方式では、どうしても記録できる音の範囲に限界がありましたが、1ビット録音方式では、この限界を大きく超えることができます。まるでコンサートホールで直接音を聞いているかのような、臨場感あふれる音声を記録することが可能となり、音楽制作の可能性を大きく広げているのです。これまで聴こえなかった音が聴こえるようになることで、音楽の楽しみ方も大きく変わっていくでしょう。