
動画の音質向上:エクスパンダ活用術
音声の強弱差をはっきりさせる機械、それがエクスパンダです。この機械は、音の大きさの幅を広げることで、メリハリのある音声を作り出します。音の大きさの幅、つまり最大の音量と最小の音量の差は、専門用語で「ダイナミックレンジ」と呼ばれています。このダイナミックレンジが広いほど、音の表現力は豊かになります。エクスパンダは、小さな音をさらに小さく、大きな音をさらに大きくすることで、このダイナミックレンジを広げます。例えば、ささやき声のように小さな音は、ほとんど聞こえないくらいまで小さくします。逆に、叫び声のように大きな音は、より強調して大きくします。この仕組みは、録音した音声を整える機械であるコンプレッサの逆の働きをしています。コンプレッサは音の強弱差を縮めて、聞きやすく滑らかな音声を作る機械です。一方、エクスパンダは音の強弱差を強調して、迫力のある、あるいは繊細な音声を作り出します。エクスパンダは、音声編集ソフトに搭載されていることが多く、動画の音声編集にも使われています。例えば、映画のシーンで、静かな場面では周囲の音を小さくして緊張感を高め、アクションシーンでは爆発音などを大きくして迫力を感じさせる、といった効果を出すことができます。また、音楽制作においても、楽器の音の強弱を強調して、より表情豊かな演奏に仕上げるために使われます。このように、エクスパンダは、音声や音楽に奥行きと立体感を与えるための、大切な役割を担っているのです。