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撮影技術

動画に奥行きを与える撮影技法「なめる」

「動画をなめるとは何か」と問われたら、撮影の構図作りの技の一つだと答えるでしょう。動画の中で、主題となるものと撮影機の前にもう一つ何かを置くことで、画面に奥行きと立体感を作ることができるのです。この「何か」は、別の物でも人でも構いません。例えば、人の肩越しに何かを写すと想像してみてください。肩が前景に、その向こう側にあるものが後景に配置されることで、平面的な画面に奥行きが生まれます。また、机の上に花瓶を置き、その後ろに座る人物を撮影する場合も同様です。花瓶が前景となり、奥の人物に視線が自然と導かれます。このように、主題の手前に何かを配置することで、画面に奥行きが生まれ、より引き込まれる映像になるのです。この技法は、単に画面に奥行きを出すだけでなく、前景と後景にある物事の繋がりを暗示することもできます。例えば、人物の肩越しに見える物が、その人物が気にしている物だとしたらどうでしょうか。見ている人の視線や感情を、間接的に表現することができます。あるいは、前景に置かれた物が主題と深い関わりを持っている場合、その主題を取り巻く状況や背景を暗示的に伝えることも可能です。例えば、職人が道具を手に作業に集中する姿を撮影するとします。手前に配置された道具は、職人の仕事内容や技術の高さを雄弁に物語るでしょう。また、ぼんやりとした前景を通して奥の主題を写すことで、夢の中のような幻想的な雰囲気を醸し出すことも可能です。このように、「なめる」という撮影技法は、単に奥行きを作るだけでなく、物語性や情緒的な表現を加える効果的な方法なのです。