
動画の音声、単一音声収録の基礎知識
単一音声とは、一つの音声の通り道だけを使って音を伝える録音方式のことです。例えるなら、片方の耳だけで音を聞いているような状態です。この方式では、左右の耳に届く音の情報が全く同じであるため、音の広がりや奥行きといった立体感は感じられません。まるで舞台役者が正面に立って語りかけているように、音源が一つの方向からまっすぐに届くため、音質は大変明瞭で分かりやすいという特徴があります。昔懐かしい真空管ラジオや初期の映画で使われていたのも、この単一音声です。現代でも、アナウンサーの肉声や落ち着いた雰囲気の語り、ある楽器の音だけを際立たせたい場合など、特定の用途で利用されています。単一音声の利点は、特別な機器を必要としないという点です。録音する際も再生する際も、複雑な機材は不要で、手軽に扱うことができます。また、データの大きさが小さくて済むため、記録媒体の容量を節約できるだけでなく、インターネット上でのやり取りもスムーズに行えます。加えて、複数の音を重ねて録音する際に、音の波が互いに干渉して音が濁ってしまう現象(位相の問題)が起こりにくいことも、単一音声のメリットです。一つの音声信号だけで構成されているため、複数音源を扱う煩雑さから解放され、編集作業も容易になります。このように、単一音声は、シンプルながらも様々な利点を持つ、今でも活躍の場を失っていない録音方式なのです。