
ビデオテープの秘密:オキサイドテープとは?
ビデオテープに映像や音声を記録するために欠かせないのが、磁気を帯びることができる物質、磁性体です。数ある磁性体の中でも、酸化鉄はビデオテープ初期の時代から活躍してきた、代表的な物質と言えるでしょう。酸化鉄は、非常に細かい粒のような状態にして、ビデオテープの表面に塗られています。この細かい粒の一つ一つが、磁石のような働きをするのです。ビデオテープレコーダーには録画ヘッドと呼ばれる部品があり、そこから電気信号が送られてきます。この電気信号に応じて、酸化鉄の細かい粒の磁気の向きが変化します。まるで、小さな磁石のN極とS極の向きが変わるようなイメージです。この磁気の向きの変化こそが、映像や音声の情報として記録される仕組みなのです。酸化鉄がビデオテープの磁性体として選ばれたのには、大きな理由が二つあります。一つは、その価格の手頃さです。他の磁性体に比べて、酸化鉄は安価で手に入れることができました。そのため、ビデオテープをより多くの人々が気軽に使えるものにすることができたのです。もう一つの理由は、その安定した性質です。酸化鉄は、温度変化や湿気などに影響されにくく、長期間にわたって安定して磁気を保持することができます。このおかげで、録画した映像や音声を劣化させることなく、繰り返し再生することが可能になったのです。このような利点から、酸化鉄を使ったビデオテープ、通称「オキサイドテープ」は広く普及し、多くの家庭で使われるようになりました。まさに、ビデオテープ時代を支えた立役者と言えるでしょう。酸化鉄は、家庭で手軽に映像や音声を記録・再生できる文化を築き、人々の生活に大きな変化をもたらしたのです。