ドロップフレームの基礎知識

ドロップフレームの基礎知識

ドロップフレームとは

動画を扱う上で、時間の管理はとても大切です。特にテレビ放送などでは、正確な時間に合わせて番組を流す必要があります。そこで登場するのが「落とし込みコマ送り」と呼ばれる技術です。

落とし込みコマ送りとは、動画の時間情報を記録するタイムコードという仕組みに使われる特殊な方法です。普段私たちが目にする動画は、たくさんのコマ送り写真が連続して表示されることで動いているように見えます。1秒間に表示されるコマ送りの枚数をフレームレートと言いますが、アメリカのテレビ放送で使われている「エヌ・ティー・エス・シー方式」では、1秒間に29.97コマ送りと、少し変わった数字が使われています。

これは、本来30コマ送りであるべきところが、技術的な理由で少しだけ遅くなっているためです。このわずかな差が、長時間になると大きなズレになってしまいます。例えば、1時間番組だと約1秒ほどのズレが生じてしまいます。

そこで、落とし込みコマ送り方式では、このズレを修正するために、特定のタイミングで2コマ送りを飛ばすという方法をとっています。具体的には、毎分0秒、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒を除く分の開始時に、0番目と1番目のコマ送りを飛ばします。つまり、実際にはコマ送りがあるにも関わらず、タイムコード上では無いものとして扱います。

少し分かりにくい仕組みですが、コマ送りを飛ばすことでタイムコードと実際の時間のズレを小さくすることができます。このおかげで、テレビ局は正確な時間管理を行いながら番組を放送できるのです。一見複雑な落とし込みコマ送り方式ですが、正確な時間管理が求められる放送においては、なくてはならない重要な技術と言えるでしょう。

時間差が生じる理由

映像の世界では、時間の流れを正確に捉えることがとても大切です。しかし、私たちがよく目にする動画には、実は「時間差」が生じることがあります。これは一体なぜでしょうか。その理由を、昔のテレビ放送の歴史と照らし合わせながら紐解いていきましょう。

昔のテレビ放送、特に白黒テレビからカラーテレビに移り変わる時代、日本ではNTSCと呼ばれる方式が使われていました。この方式では、１秒間に29.97コマの画像を連続で表示することで動画を作り出しています。一見すると、１秒間にほぼ30コマなので問題ないように思えますが、この0.03コマの差が、後々大きな時間差を生む原因となるのです。

30コマと29.97コマ。このわずかな差が、１時間になると108コマ、時間に換算すると約3.6秒ものずれになってしまいます。これは、放送や映像を作る現場では大きな問題です。例えば、生放送中に映像と音声がずれてしまったり、複数の映像を組み合わせる際にタイミングが合わなくなったりする可能性があります。

そこで登場するのが「ドロップフレーム方式」です。一見、コマを間引く非直感的な方法に思えますが、この方式を採用することで「見かけ上のコマ数」を減らし、実時間とのずれを修正しているのです。具体的には、１分ごとに２コマを除くことで、時間差の蓄積を防いでいます。１分間に２コマ減らすと、１時間では120コマ減ることになり、30コマの動画と比較して４秒短くなります。29.97コマの動画と比べると約0.4秒の差に収まり、実時間との同期を維持することができるわけです。

このように、ドロップフレーム方式は、一見複雑な仕組みですが、実は正確な時間管理のために、映像制作において重要な役割を担っています。普段何気なく見ている動画の裏側にも、このような工夫が凝らされているのです。

ドロップフレームの仕組み

動画には、時間の流れを記録する方法としてタイムコードというものがあります。これは、動画の各コマに番号を付けていくことで、特定の位置を示すためのものです。

通常、私たちは１秒間に３０コマの動画を見ていると思っています。しかし、テレビ放送などで使われているＮＴＳＣ方式では、実際には１秒間に２９．９７コマという少しだけ少ないコマ数で動画が記録されています。このわずかな差が、長い時間で見ると時間のずれを生む原因となります。

そこで登場するのが「落としコマ」という技術です。これは、特定のタイミングでコマ番号を意図的に飛ばすことで、タイムコードと実際の時刻のずれを修正する仕組みです。

具体的には、１分ごとに６回、コマ番号を調整します。１分間のうち、０秒、１０秒、２０秒、３０秒、４０秒、５０秒の時点では、最初の２コマを飛ばします。つまり、実際には映像が存在するにもかかわらず、タイムコード上では存在しないものとして扱われます。

１分間に２コマ、１時間にすると１０８コマを飛ばすことで、２９．９７コマと３０コマの差を補正し、実際の時刻との同期を維持しています。

この処理は自動的に行われるため、動画を作る人が手動で調整する必要はありません。コマを飛ばすというと、映像が途切れて見えるのではないかと心配になるかもしれませんが、実際には人間の目にはほとんど分からない程度の細かい調整です。ですので、動画を見るときに違和感を感じることはありません。

放送における重要性

放送業界では、時間管理は番組制作の根幹をなす非常に大切な要素です。特に、ニュース番組や生放送といった時間厳守が求められる番組では、一秒のずれも許されません。刻々と変化する情報を視聴者に正確に伝えるためには、番組を定められた時間枠の中で滞りなく進行させる必要があるからです。

この正確な時間管理を実現するために、放送業界では「落としコマ」と呼ばれる特殊な技術が広く採用されています。落としコマとは、映像と音声を記録する際の時間情報を示す「時間符号」と現実の時間のずれを調整する技術です。テレビ放送では、一秒間に約３０コマの画像が連続して表示されることで動画として認識されますが、落としコマ方式では、特定のコマを意図的に落とすことで、時間符号と現実の時間の同期を保っています。

落としコマ方式の採用により、番組の開始時間や終了時間を厳密に管理することが可能になります。例えば、ニュース番組で事件や事故の速報を伝える際、一分一秒を争う状況下でも、正確な時間情報に基づいて情報を伝えることができます。また、生放送中に複数の映像を切り替える場合でも、落としコマによって時間符号が一致しているため、映像と音声のずれが生じることなく、スムーズな番組進行を実現できます。

さらに、落としコマは番組の編集作業においても大きな役割を果たします。複数のカメラで撮影された映像や、事前に収録された映像素材を組み合わせる編集作業では、それぞれの映像の時間情報を正確に合わせる必要があります。落としコマ方式を採用することで、編集作業における時間調整の手間を省き、作業効率を大幅に向上させることができます。このように、落としコマは放送業界において、正確な時間管理と円滑な番組制作に欠かせない重要な技術となっています。

ノンドロップフレームとの違い

「落とし枠」と「落とし枠なし」は、動画における時間の数え方が違います。簡単に言うと、「落とし枠」は特定の枠を飛ばして時間を調整するのに対し、「落とし枠なし」は一切枠を飛ばさずに時間を数えます。

「落とし枠なし」では、1秒間に30枠と決めて、それをひたすら数え続けるという単純な方法です。例えば、30秒経てば900枠、1分経てば1800枠と、機械的に計算できます。この方法は、店頭で販売されるようなディスク型の動画によく使われています。なぜなら、テレビ放送のように秒単位で時間を合わせる必要がないからです。むしろ、ディスク型の動画では、見たい場面をすぐに探し出せることのほうが大切です。

例えば、特定の場面を探したり、少しだけ先に進めたりする操作は、枠を飛ばさずに数えていたほうが正確に操作できるので、「落とし枠なし」のほうが都合が良いのです。

しかし、「落とし枠なし」には一つ注意点があります。実際の時間と記録されている時間が徐々にずれていくという問題です。短い動画であればそれほど大きなずれにはなりませんが、数時間に及ぶ長い動画の場合、このずれは無視できないほど大きくなってしまいます。例えば、30分あたり約3.6秒ほどのずれが生じ、1時間では7.2秒ものずれが生じることになります。ですから、「落とし枠なし」を使う場合は、長時間の動画にならないよう注意が必要です。

「落とし枠」と「落とし枠なし」、それぞれに利点と欠点があるので、動画の用途に合わせてどちらを使うかを決めることが大切です。

まとめ

テレビ放送などでよく使われる「エヌ・ティー・エス・シー」方式の動画には、時間と実際の動画の長さに少しずれが生じる問題があります。このずれを調整するために、「ドロップフレーム」という技術が使われます。ドロップフレームは、まるでコマをこっそり抜き取るようにして、ずれを修正する賢い方法です。

放送のように、時間ぴったりに番組を流す必要がある場合は、このドロップフレームが欠かせません。例えば、生放送のニュース番組やスポーツ中継など、秒単位の正確さが求められる場面で、動画と時計のずれをなくすために活躍します。

一方で、映画や販売用の動画など、正確な時間よりも、動画のどのコマに何が映っているかが重要な場合は、「ノンドロップフレーム」が使われます。ノンドロップフレームでは、コマを抜き取ったりせず、全ての情報を残すため、編集作業などで特定のコマを探しやすくなります。例えば、映画の特定のシーンを修正したり、販売用動画に効果音を追加する際などに便利です。

このように、ドロップフレームとノンドロップフレームは、それぞれに利点と欠点があります。動画の用途によって、どちらの方法が適しているかを判断し、使い分けることが大切です。例えば、テレビ局でニュース番組を作るならドロップフレーム、映画制作会社で映画を作るならノンドロップフレームを選ぶといった具合です。

動画制作に携わる人は、ドロップフレームとノンドロップフレームの違いをよく理解し、適切に使い分けることで、より正確でスムーズな作業ができます。視聴者にとっても、動画の時間が正確に表示されることは、内容をより深く理解する上で役立ちます。まるで時計の針のように、正確な時間を刻むドロップフレームと、フィルムのように全ての情報を記録するノンドロップフレーム。どちらの技術も、私たちが動画を楽しむ上で、重要な役割を果たしていると言えるでしょう。