動画撮影の落とし穴:ローリングシャッター現象

動画撮影の落とし穴:ローリングシャッター現象

動画を作りたい

先生、『ローリングシャッター』ってどういう意味ですか?なんか、映像がゆがむ現象だって聞いたんですけど…

動画制作専門家

そうだね。カメラのセンサーが画像を読み込む時に、上から下へと順番に読み込んでいくんだけど、その間に被写体が動くと、読み込み開始の時と終了の時で被写体の位置が変わってしまうために、ゆがんで見える現象のことだよ。

動画を作りたい

なるほど。上から下へと順番に読み込むんですね。ということは、被写体が速く動けば動くほど、ゆがみも大きくなるんですか?

動画制作専門家

その通り!被写体の動く速さが速いほど、ゆがみも大きくなるよ。特に、電子シャッターを使っているカメラで起こりやすい現象なんだ。

ローリングシャッターとは。

動画を撮るときに、カメラの中の部品(イメージセンサー)が画像を読み込むやり方のせいで、撮りたいものが動いていると、画像の上と下でゆがみが起こることがあります。これは、イメージセンサーが画像を上から下へと順番に読み込むため、読み込みが終わるまでにものが動くと、上の部分と下の部分で位置がずれてしまうからです。特に、電子シャッターという種類のシャッターを使っているときに、このようなゆがみが起きやすいです。この現象を『ローリングシャッター』といいます。

動画のゆがみ

動画のゆがみ

近頃では、携帯電話や写真機などで動画を撮るのがとても簡単になりました。誰でも、どこでも気軽に動画を記録できるようになりましたが、それと同時に、動画に妙な歪みが生じる場面に遭遇する機会も増えたのではないでしょうか。例えば、飛行機のプロペラが波を打つように見えたり、ギターの弦が斜めに曲がって映ったり、走っている車がぐにゃりと歪んで見えたり。このような現象は、動画を記録する仕組みが原因で起こるもので、「ローリングシャッター現象」と呼ばれています。

動画は、実は一枚一枚の写真を連続して表示することで、動いているように見せているものです。写真機で写真を撮る時と同じように、動画を撮影する際にも、撮像素子に光を取り込んで画像を作っています。静止画の場合は、撮像素子全体に一度に光を取り込みますが、動画の場合は、撮像素子の上から下へ、一行ずつ順番に光を取り込んでいきます。この光を取り込む走査線のことを「シャッター」と呼びますが、一行ずつ順番に走査していく様子が、巻き取り式のシャッターを連想させることから、「ローリングシャッター」と呼ばれています。

このローリングシャッター方式では、画像全体を捉えるのにわずかな時間差が生じるため、動きの速い被写体を撮影すると、歪みが生じてしまうのです。例えば、上部を撮影している間に被写体が移動すると、下部を撮影する際には被写体は既に別の場所に移動しているため、結果的に被写体が斜めに歪んで映ってしまうのです。回転するプロペラが波打つように見えるのも、この時間差が原因です。

ローリングシャッター現象は、特に動きの速い被写体を撮影する場合に顕著に現れます。この現象を避けるためには、高速シャッターを使用したり、全体を一度に読み出すグローバルシャッターを搭載したカメラを使用するなどの対策が必要です。携帯電話などで動画を撮影する際には、このローリングシャッター現象が起こる可能性があることを理解し、被写体や撮影方法を工夫することで、歪みの少ない動画を撮影するように心がけましょう。

現象 原因 解説 対策
ローリングシャッター現象 動画撮影時に撮像素子が上から下へ一行ずつ光を取り込むローリングシャッター方式 画像全体を捉えるのに時間差が生じるため、動きの速い被写体を撮影すると歪みが生じる。 高速シャッターを使用する、グローバルシャッター搭載カメラを使用する。

仕組み

仕組み

動画を撮る機械には、光を電気の信号に変える部品が入っています。この部品は、レンズを通ってきた光を捉え、それを数字のデータに変えて、動画や写真として記録します。この部品を、光を感じる部品と呼ぶことにしましょう。

光を感じる部品は、実は画面全体を一度に読み取ることはできません。まるで窓のよろい戸を上から下に順番に下ろしていくように、画面の上の部分から下の部分へと順番に光を読み取っていきます。

この読み取り方を走査と呼びます。走査は、光を感じる部品が上から下へ、一行ずつ光を読み取っていく作業を指します。そして、この走査の仕方が、動いているものを撮影した時にゆがみを生む原因、つまりローリングシャッター現象を引き起こすのです。

動いているものを撮影するとき、走査が始まった時点と走査が終わる時点では、ものの位置が変わってしまっています。例えば、走査が始まった時にものの位置が画面の上部にあり、走査が終わるまでにものが下に移動した場合、画面の上部にはものの最初の位置が、下部にはものの移動後の位置が記録されます。

結果として、まるでゴムのように、ものが斜めに伸びたり歪んだりして写ってしまいます。これがローリングシャッター現象です。よろい戸のように上から下へと光を読み込んでいく様子から、「巻き上げる」という意味の英語の言葉を使い、「ローリング」シャッターと呼ばれています。

もし、光を感じる部品が画面全体を一度に読み取ることができれば、このようなゆがみは起こりません。しかし、現在の技術では、多くの動画を撮る機械で、このよろい戸のような走査方式が使われています。そのため、ローリングシャッター現象は、動画撮影においてよく見られる現象の一つとなっています。

電子シャッターとの関係

電子シャッターとの関係

動画を撮る機械には、大きく分けて二つの幕の開き方があると考えられます。一つは、昔からあるカメラのように、物理的に幕を開けて、光を取り込む方法です。もう一つは、光の情報を記録する部品、いわばカメラの目の働きを電気的に切り替えることで、幕の開閉と同じ効果を得る方法です。後者は、電気の幕という意味で、電子幕と呼ばれています。

動画を撮るときに、物が歪んで写ってしまう現象があります。これを、幕が転がるように開く様子に見立てて、転がる幕現象と呼びます。この現象は、電子幕を使うときに特に目立ちます。電子幕は、物理的な幕がないため、カメラの目が光の情報を上から下まで順番に読み取っていきます。この読み取りに時間がかかるため、動きの速い物体を撮影すると、歪んでしまうのです。

例えば、走っている車輪を撮影したとします。カメラの目が上を読み取っている時は車輪はまだ前の位置にありますが、目が下に移動するにつれて車輪も動いてしまうため、結果として車輪が楕円形に歪んで写ってしまいます。高速で回転するプロペラの羽根でも同じ現象が起こります。

一方、物理的な幕を使うカメラでは、幕が一度に開くので、光の情報はほぼ同時に記録されます。そのため、転がる幕現象は起きにくくなります。しかし、完全に防げるわけではありません。なぜなら、物理的な幕にも開閉にかかるわずかな時間があり、その間に被写体が動いてしまうと、やはり歪みが生じてしまう可能性があるからです。

特に、幕の開閉速度が遅い場合や、被写体が非常に速く動いている場合は、物理的な幕を使っていても歪みが目立つことがあります。例えば、モータースポーツのような速い動きを撮影する場合、カメラの設定によっては、電子幕と同じように歪んでしまうことがあります。ですから、どんなカメラを使う場合でも、転がる幕現象が起こる可能性があることを理解し、撮影状況に応じて適切な設定をすることが大切です。

項目 物理幕 電子幕
仕組み 物理的に幕を開閉して光を取り込む センサーの読み取りを電気的に切り替える
転がる幕現象 発生しにくい 発生しやすい
歪みの原因 幕の開閉にかかるわずかな時間 センサーの読み取りに時間がかかる
歪み発生例 幕の開閉速度が遅い場合、被写体が非常に速く動いている場合 動きの速い被写体 (車輪、プロペラなど)
その他 カメラの目が上から下まで順番に読み取っていく

対策

対策

画面がゆがんでしまうローリングシャッター現象、何とかしたいですよね。いくつか方法があるので、試してみてください。まず、カメラを動かす時は、急に動かさないようにしましょう。被写体が動いている方向に合わせて、ゆっくりとカメラを動かすことで、ゆがみを少なくすることができます。被写体の動きを予測しながら、滑らかにカメラを動かす練習をしてみましょう。次に、撮影時の設定を変えてみるのも一つの手です。画と画の間の時間を短くすることで、ゆがみは小さくなります。多くのカメラでこの設定を変えることができるので、確認してみてください。設定項目の名前は機種によって違いますが、「こま数」や「コマ送り速度」といった言葉を探してみてください。値を大きくすればするほど、ゆがみは小さくなります。ただし、データの量は増えてしまうので、保存できる量に注意が必要です。最後に、カメラ自体を変えるという方法もあります。機種によっては、シャッターの種類を選べるものがあります。電子シャッターではなく、機械式のシャッターを選べば、ローリングシャッター現象は起こりません。どうしてもゆがみをなくしたい場合は、カメラの買い替えも検討してみましょう。機種を選ぶ際には、シャッターの種類に注目してみてください。少しの手間で、映像の質はぐっと上がります。色々な方法を試して、ゆがみの少ない、綺麗な映像を撮影してみてください。

方法 詳細 メリット デメリット
カメラの動かし方 被写体の動きに合わせてゆっくりと動かす、急な動きを避ける 特別な機材や設定変更不要 練習が必要、完全になくすのは難しい
撮影時の設定変更 コマ数/コマ送り速度の値を大きくする 多くのカメラで設定変更可能 データ量の増加
カメラ自体を変える 機械式シャッターのカメラを選ぶ ローリングシャッター現象が起きない コストがかかる

編集ソフトによる補正

編集ソフトによる補正

動画を撮影した後に、編集ソフトを使って映像のゆがみを直すことができます。このゆがみは、カメラの仕組みに由来するもので、特に素早く動くものを撮影した際に目立ちやすい、画面の上部と下部で被写体の形がずれてしまう現象です。多くの編集ソフトには、このゆがみを自動で認識し、補正する機能が備わっています。

具体的には、ソフトが映像を解析し、ゆがみの程度を自動的に判断します。そして、そのゆがみに合わせて映像を調整し、本来あるべき形に近づけていきます。例えば、建物の線が斜めに映ってしまった場合、編集ソフトを使えば、その線をまっすぐに修正することができます。また、走る人の体が歪んで映ってしまった場合も、より自然な形に補正できます。

ただし、編集ソフトでできる補正にも限界があります。ゆがみがひどい場合は、完全に元通りにすることが難しい場合もあります。また、補正を行うことで、画質がわずかに低下してしまう可能性もあります。さらに、自動補正では意図しない部分まで変化してしまうこともあり、細かい調整が必要になる場面もあるでしょう。そのため、撮影の段階で、できるだけゆがみが発生しないように注意することが大切です。カメラを固定したり、動きの速さに合わせた設定をすることで、後から編集ソフトで補正する手間を減らすことができます。

編集ソフトは、映像のゆがみをある程度軽減するための便利な道具ですが、万能ではありません。撮影時の工夫と編集ソフトの活用を組み合わせることで、より自然で美しい映像を作り上げることができるでしょう。

項目 内容
動画のゆがみ カメラの仕組みに由来し、特に素早く動くものを撮影した際に目立ちやすい現象。画面の上部と下部で被写体の形がずれてしまう。
編集ソフトの機能 ゆがみを自動で認識し、補正する機能がある。映像を解析し、ゆがみの程度を自動的に判断し、映像を調整する。例えば、建物の線が斜めになっていたり、走る人の体が歪んでいたりするのを修正できる。
編集ソフトの限界 ゆがみがひどい場合は完全に元通りにすることが難しい。画質がわずかに低下する可能性もある。自動補正では意図しない部分まで変化してしまうこともあり、細かい調整が必要になる場合もある。
撮影時の工夫 ゆがみを軽減するために、カメラを固定したり、動きの速さに合わせた設定をすることが重要。
まとめ 編集ソフトは便利な道具だが万能ではない。撮影時の工夫と編集ソフトの活用を組み合わせることで、より自然で美しい映像を作ることができる。

うまく付き合うには

うまく付き合うには

動画を撮るときに、画面がゆがんでしまう現象を見たことはありませんか?これは「ローリングシャッター現象」と呼ばれるもので、撮像センサーが画像を読み取る仕組みが原因で起こります。まるで幕が上から下に降りていくように、一部分ずつ読み取っていくため、動きが速い被写体を撮影すると、画面の上下で時間のずれが生じ、ゆがんで見えてしまうのです。

この現象を完全に無くすことは、今の技術では難しいです。高価な専門的な機材を使えば軽減できますが、普段使うような機器ではなかなか難しいでしょう。ですから、この現象の特徴を良く理解して、うまく付き合っていくことが大切です。

例えば、走っている人や車を撮影すると、ゆがみやすくなります。このような場合は、被写体の動きを予測して、少し余裕を持って撮影してみましょう。また、カメラを固定して撮影するよりも、被写体と一緒に動いて撮影する方が、ゆがみを軽減できる場合もあります。

さらに、この現象を逆手に取って、面白い映像表現に活用することもできます。わざと被写体を速く動かしたり、カメラをすばやく横方向に振ると、独特のゆがみが生じ、印象的な映像効果を作り出せます。まるで漫画のような表現や、スピード感あふれる映像を作ることができます。

一見すると欠点に見えるローリングシャッター現象ですが、その仕組みを理解し、うまく工夫することで、動画表現の可能性を広げることができるのです。ぜひ、色々な撮影方法を試して、自分らしい表現を見つけてみてください。

現象 原因 対策 応用
ローリングシャッター現象 (画面のゆがみ) 撮像センサーが画像を一部分ずつ読み取るため、動きが速い被写体で時間のずれが生じる – 被写体の動きを予測して撮影
– カメラを被写体と一緒に動かす
– わざと被写体を速く動かす
– カメラをすばやく横方向に振る
– 漫画のような表現やスピード感あふれる映像